行列のメリーゴーラウンドを横目に過ぎる。8月末。4日後に閉園する「としまえん」で、小柴友里江さん(41)が夫を連れて、真っ先に向かったのはゲームセンターだった。
四半世紀前の記憶をたどった。広さは半分くらいになっていた。見覚えのないゲームばかり。でも、あのレトロな明かりに照らされた一画は残っていた。「変わってないな」
ボウリング球を、狙った地点へ転がす「BOWLER(ボーラー) ROLLER(ローラー)」。高校時代にここでアルバイトをしていた頃は、人気ゲームのひとつだった。でも、いま、客はいない。
200円を払って挑戦した。あいかわらず難しい。転がすのは重たいボウリング球だけど、レーンは2メートルほど。途中にふたつ盛り上がった部分があって、狙った地点に届かなかったり行きすぎたり。もう1回。うまくいかない。
拡大する閉園前日のとしまえん。ゲームコーナーでは「BOWLER ROLLER」の前にも人だかりができていた=2020年8月30日、東京都練馬区、藤原伸雄撮影
当時の記憶は、学校生活よりも鮮明に残っている。景品のカッパ人形がどうしても欲しかったこと。バイトが休みの日にわざわざ行って、「社員さん」に助言をもらって成功させたこと。大人になったいま思い返すと、ちょっと笑ってしまうようなことだけど、あのころは夢中だった。
3投目。また外した。
9回目の失敗、そして
あきらめて園内をめぐる。昔といま。変わっていないものを見つけては、夫にも教えた。女性スタッフのキュロット姿、屋外に置かれた輪投げの場所……。
拡大するとしまえんの閉園まであと4日。小柴友里江さんは四半世紀ぶりに、「BOWLER ROLLER」でボウリング球を手にした=2020年8月27日、東京都練馬区、本人提供
空がオレンジ色に染まったころ…
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