【パリ=白石透冴、ブリュッセル=竹内康雄】19日投開票のフランス国民議会(下院、577議席)決選投票で、マクロン大統領が率いる与党連合が議席を大きく減らし、過半数を下回った。改革推進のための法案成立が難しくなる可能性があり、政権に打撃となる。左派連合が躍進し、野党最大勢力となる見通しだ。
仏内務省によると、与党連合の議席数は改選前の346から245まで減った。最大勢力を確保したものの、過半数ラインである289議席を大きく下回る。ドモンシャラン環境相がパリ南郊の選挙区で敗れるなど各地で苦戦した。
急進左派「不服従のフランス」のメランション党首が率い、中道左派社会党、環境政党欧州エコロジー・緑の党(EELV)などを含む左派連合は131議席となった。極右国民連合は改選前の6から89まで大幅に議席を積み上げた。野党最大勢力が急進左派系、野党第2勢力が極右という戦後の仏政治で例を見ない議席配分だ。
ボルヌ首相は記者会見し「フランスにとって危険な状況が生まれた。明日からただちに過半数確保のために努力する」と述べた。ただ少数与党を目指すのか他党と連立を組むのかなど戦略は未知数だ。61議席を取っている中道右派共和党との協力が最も可能性が高いとの見方がある。大躍進を果たしたメランション氏は「与党は完全に敗北した」と声を張り上げた。
与党大敗の背景は、物価高だ。新型コロナウイルス禍の影響でインフレ傾向が強まっていたところに、ロシアのウクライナ侵攻が加わった。政権への批判の声が高まり、対策の拡充を訴えた野党が票を伸ばした。
マクロン政権は1期目(17~22年)に矢継ぎ早の改革をなし遂げたが、下院で過半数を固め法案を通せる態勢だったことが大きい。過半数割れを起こしたことで、年金の簡素化、定年の引き上げなどの目玉改革の実現が遠のく可能性もある。
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