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情報BOX:ウクライナ産穀物、中東欧の輸入禁止が与える影響 - ロイター (Reuters Japan)

[ブカレスト/ワルシャワ 7日 ロイター] - ロシアは7月、1年前に成立した黒海沿岸の港湾経由でウクライナ産穀物を安全に輸出することを認める合意から離脱した。ウクライナはそれ以降、欧州連合(EU)経由の代替ルートに完全に依存している。

 ロシアは7月、1年前に成立した黒海沿岸の港湾経由でウクライナ産穀物を安全に輸出することを認める合意から離脱した。ウクライナはそれ以降、EU経由の代替ルートに完全に依存している。写真はハンガリー北東部Timarの農場でトウモロコシを調べる人。4月撮影(2023年 ロイター/Bernadett Szabo)

これを受けてEU本部は、ウクライナ支援とEU東部の加盟5カ国の要望とのバランスを取るべく奔走している。東部5カ国は、自国市場を保護するため、ウクライナ産穀物の輸入禁止措置を少なくとも2023年末まで延長することを求めているからだ。

ウクライナ近隣の5カ国、つまりブルガリア、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、スロバキアの農家を守るための現行の輸入禁止措置は、9月15日に失効することになっている。

ロシアは黒海穀物合意から離脱して数週間、ウクライナにとって船舶による輸出ルートとして最後に残されたドナウ川沿いの内陸港湾インフラへの攻撃を続けている。EUに対しては、近隣諸国への穀物輸出の再開に向けたプレッシャーがさらに高まっている。

中東欧5カ国における一時的な輸入禁止措置が、ウクライナ産穀物の輸出、そして他の輸出先への輸送にどのような影響を与えているか、詳しく見ていこう。

◎中東欧諸国へのウクライナ産穀物の流入が増加した理由

ウクライナ産穀物はEUによる関税を免除されており、各国の国内産穀物よりも割安になっている。

物流コストの増大もあり、2022年から2023年初頭にかけて、近隣5カ国向けのウクライナ産穀物の輸出は過去に例のない増加を見せた。これによって、5カ国で生産される穀物の販売が混乱し、国内市場および一部の輸出市場から締め出され、価格が下落する状況が生じ、各国農家の抗議を招いた。

ポーランドの穀物輸入は2022年に3倍近く増え327万トンとなったが、その75%は、トウモロコシと小麦を中心とするウクライナ産穀物だった。大量の輸入は2023年3月まで続いた。

ルーマニアは本来EU有数の穀物輸出国だが、同国農業省によれば、5月の時点で国内にはウクライナ産穀物と油糧種子が320万トンも滞留していた。ウクライナ侵攻前の穀物輸入量はごくわずかだった。

ルーマニアの穀物市場コンサルタント会社アグリコラムのチェザール・ゲオルゲ氏は、ウクライナ産穀物の販売量を470万トン前後と見ており、輸入禁止措置が施行された後も、既存の契約を装った輸入が続いたと指摘する。

ハンガリーは開戦前、ウクライナから年間最大5万トンの穀物と油糧種子を輸入していたが、2022年には250万トンへと急上昇、2023年も輸入禁止措置が実施されるまで最大30万トンが輸入された。

スロバキアでは、公式統計によれば、ウクライナ産穀物の輸入量が2022年下半期に33万9000トンに増大した。これは同年上半期に比べて約10倍に相当する。

◎輸入禁止後の状況

4月、ポーランドとハンガリーが一方的にウクライナ産穀物その他の食料の輸入を禁止した。ウクライナにとって最大の代替輸出ルートであるルーマニアは輸入禁止こそ見送ったものの、国内での輸送は封印した状態で行うものとした。

EUは5月、いずれもウクライナと国境を接するポーランド、ルーマニア、ハンガリー、スロバキア、さらにはドナウ川南方に位置するブルガリアに対し、ウクライナ産小麦、トウモロコシ、油糧種子の国内販売を6月5日まで禁止することを認めたが(その後9月15日まで延長)、これら諸国を経由した輸出は継続するものとした。

禁止措置の施行後、5カ国内の通過量は急増した。ポーランド経由で他国に運ばれるウクライナ産小麦は、今年第1四半期の月間4万3000─5万1000トンから、6月には9万トン以上に急増した。またポーランド農業省によれば、トウモロコシの通過量は、今年第1四半期の月間約5万─7万トンから、6月には17万トンに増大した。

開戦以来、ウクライナ産穀物輸出の3分の1は黒海に面したルーマニアのコンスタンタ港から出荷されている。その量は2022年には860万トン、今年上半期には750万トンだった。

5月と6月には、特にウクライナの河川港からドナウ川を通じて運ばれる量が増加した。

◎輸入禁止延長の要請にEU本部はどう応じるのか

7月19日、5カ国は輸入禁止措置について、少なくとも今年末までの延長を要請した。EU本部は9月上旬に、今年の作況や貯蔵能力、第三国の穀物入手状況を考慮しつつ、輸入禁止措置について検証する予定だ。

10月、あるいは11月に総選挙を予定しているポーランドは、ウクライナ産穀物の輸入禁止を9月15日に解除するつもりはないと表明しており、EU本部に対して保護措置延長を認めるよう圧力を高めている。

一方、リトアニアはEUの執行機関である欧州委員会に対し、バルト海沿岸の港湾を経由してウクライナ産穀物を輸出するルートを整備するよう要請している。リトアニア、ラトビア、エストニアの5つの港湾を合わせると、2500万トンの穀物輸出能力がある。

鍵となるのは、「連帯のレーン」と呼ばれる陸上のルートが経済的に見合うかどうかだ。

ウクライナは、EU経由での輸送ルートでは1トン当たり30─40ドル(約4300─5700円)の追加コストがかかると試算している。ルーマニアのコンスタンタ港を運営するコムベックスでマネジャーを務めるビオレル・パナイト氏によれば、同港経由での輸出に比べ、ポーランド経由の陸路で輸出する場合は、1トン当たり37ユーロ(約5800円)の追加コストが必要だという。

(Luiza Ilie記者、Marek Strzelecki記者、翻訳:エァクレーレン)

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