昨年9月に亡くなったエリザベス英女王が1983年にアメリカを訪問した際、暗殺の脅威にさらされる可能性があったことが、アメリカ連邦捜査局(FBI)が新たに公開した文書で明らかになった。
それによると、FBIはこの女王の訪米の間、アイルランド共和軍(IRA)による脅威を懸念していた。
こうした中、サンフランシスコの警官に対し、暗殺の予告があったという。
文書によると、サンフランシスコにあるアイリッシュ・パブの常連だったこの警官は、パブで知り合った男性から電話があったと、FBI職員に警告した。
この男性は警官に対し、「北アイルランドでゴム弾によって殺された」娘の復讐を考えていると語ったという。
警官が相手からこの話を聞いたのは1983年2月4日、エリザベス女王と夫のフィリップ殿下が米カリフォルニア州を訪れる1カ月前のことだった。
FBIは文書の中で、「この男性はエリザベス女王を害するつもりで、ロイヤル・ヨット・ブリタニア号がゴールデン・ゲート・ブリッジの下を通過する際に上から何かを落下させるか、ヨセミテ国立公園訪問時にエリザベス女王を殺そうとするつもりだ」としている。
この脅迫に対し、米シークレット・サービスは「ヨットが近づいた時にゴールデン・ゲート・ブリッジの歩道を封鎖」することで対応しようとした。ヨセミテ国立公園での対策は不明だが、訪問は実現した。何らかの逮捕があったのかどうか、FBIは明らかにしていない。
102ページにわたる文書は22日、米メディアの情報公開法に基づく請求を受け、FBIの情報ウェブサイトで公開された。
故エリザベス女王の訪米の多くは、この1983年の西海岸訪問も含め、北アイルランド紛争が激化していた時期に行われた。
1976年に女王は、アメリカ建国200周年の式典に参加するためにニューヨーク市を訪れた。
その際、市内のバッテリーパーク上空を「イングランドよ、アイルランドから出て行け」と書かれた横断幕を掲げて飛行した小型飛行機のパイロットに対して、裁判所への出頭命令が出されたいきさつも、文書には書かれていた。
文書では、女王の身の安全に具体的な脅威が及ぶ危険を、FBIが常に警戒していた様子がうかがえる。
女王のまたいとこにあたるマウントバッテン卿は、1979年にアイルランド・スライゴ郡沖で起きたIRAによる爆破事件で死亡した。
1989年に女王が私用でケンタッキー州を訪れた際には、FBIは内部文書で「イギリス君主に対するアイルランド共和国軍による脅威の可能性は、常に存在する」と書いていた。
この文書はさらに、「ボストンとニューヨークには、IRAメンバーによるエリザベス2世に対する脅迫を引き続き警戒するよう、また、ケンタッキー州ルイビルにも直ちに同じ体制に入るよう要請する」と続く。
競走馬を所有していたエリザベス女王は、ケンタッキーダービーなど競馬やそれにまつわる様々なものを楽しむために、しばしばケンタッキー州を訪れていた
1991年の公式訪問時には、当時のジョージ・H・ブッシュ米大統領と共に、米メジャーリーグのボルティモア・オリオールズの試合を観戦する予定だった。
FBIはこの時、「アイルランドの団体」がスタジアムでの抗議活動を計画しており、「アイルランドの団体がグランドスタンドのチケットを大量に予約していた」と、シークレットサービスに警告していた。
FBIは米NBCニュースに対し、今回公開された文書以外の「追加記録」が存在する可能性があると述べたが、その公開時期については明言しなかった。
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