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電通・まつりさんの死から5年 母がいま気がかりなのは - 朝日新聞デジタル

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経世彩民 木村裕明の目

 電通の新入社員だった高橋まつりさん(当時24)が東京都内の女子寮で投身自殺をしてから、今月25日で5年になる。まつりさんは2016年秋、精神障害を発症して過労自殺に至ったとして労災認定され、母の幸美(ゆきみ)さんはこの年の暮れ、報道各社に手記を寄せた。

 「まつりの命日を迎えました。去年の12月25日クリスマス・イルミネーションできらきらしている東京の街を走って、警察署へ向かいました。噓(うそ)であってほしいと思いながら…」。担当デスクだった私はこんな書き出しで始まる手記の文面に胸を打たれ、ぜひ多くの人に全文を読んでもらいたいと、朝日新聞デジタルへの配信を事前に準備していた。

拡大する写真・図版高橋まつりさん(左)と母幸美さん=2014年1月、旅行先のタイで、幸美さん提供

手記の全文、1面トップ記事に

 命日に届く朝刊の紙面作りが進むクリスマスイブの夕方。手記全文を1面に載せると同僚から電話で伝えられ、とても驚いた。手記、しかも全文が1面のトップ記事になることはめったにない。東京の夜景の写真とともにレイアウトされた印刷前の紙面イメージを見て、目頭が熱くなったことを覚えている。

 掲載された手記は大きな反響を呼んだ。その3日後、電通は労働基準法違反容疑で書類送検され、石井直(ただし)社長(当時)が即日引責辞任を表明。日本企業にはびこる長時間労働の是正に向けた社会の関心は一気に高まった。

拡大する写真・図版記事「働く全ての人 意識変わって欲しい」

 手記にはこんなくだりがある。「まつりの死が、日本の働き方を変えることに影響を与えているとしたら、まつりの24年間の生涯が日本を揺るがせたとしたら、それは、まつり自身の力かもしれないと思います」

 それから1年半後、18年6月に残業時間の罰則つき上限規制を盛り込んだ働き方改革関連法が成立し、19年4月から順次施行されている。まつりさんが日本の働き方に大きな影響を及ぼしたことは間違いない。

拡大する写真・図版高橋まつりさんの遺骨が分骨されている高尾みころも霊堂。年に1度の産業殉職者合祀(ごうし)慰霊式で風船が放たれた。今年も労災認定を受けた2541人の御霊(みたま)を新たに迎えた=2020年10月28日、東京都八王子市

 まつりさんの遺骨の一部は17…

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